説明
収録曲
ショパン | ||
1. | バラード第1番ト短調、作品23 | 9:42 |
2. | バラード第2番ヘ長調、作品38 | 8:02 |
3. | バラード第3番変イ長調、作品47 | 7:54 |
4. | バラード第4番ヘ短調、作品52 | 12:00 |
サン=サーンス | ||
5. | ワルツ形式の練習曲 変ニ長調、作品52-6(「6つの練習曲 第1集」より) | 6:30 |
6. | トッカータ 嬰ヘ短調、作品72-3(「アルバム」より) | 2:22 |
7. | 主題と変奏 ハ長調、作品9 | 7:06 |
8. | アレグロ・アッパッシオナート、嬰ハ短調、作品70 | 6:18 |
9. | トッカータ ヘ長調、作品111-6(「6つの練習曲 第2集」より) | 4:20 |
Total Time | 64:51 |
ジネット・ドワイヤン、ピアノ
解説
ジネット・ドワイヤンのショパン、サン=サーンス
ジネット・ドワイヤンは1921年7月10日にモンソー=レ=ミヌ(パリの東方約30km、モー近郊)に生まれた。
幼くして楽才を示し、10歳でパリ音楽院に入学、ラザール・レヴィに師事。ピアノ、和声、伴奏でプルミエ・プリを獲得して15歳で卒業。16歳の時に5年に一度のクレール・パージュ・コンクール、また翌年にはガブリエル・フォーレ国際コンクールで入賞している。その後はフランス、ベルギー、スペイン、ポルトガルで演奏活動をしたが第二次世界大戦のため中断。
戦後はその活動範囲をオーストリア、イタリア、イギリス、スイス、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、アイスランド、アイルランド、南アフリカなどにまで広げた。またパリではパドゥルー、コロンヌ、ラムルーの各オーケストラとも共演した。1940年代末から1950年代にかけて録音活動を精力的に行い、仏パテ、仏グラモフォン、米ウエストミンスター、仏ヴェガといったレーベルに録音。
ピアノ独奏の他に夫のヴァイオリニスト、ジャン・フルニエとも共演。1958年には夫とともに来日を果たしている。しかし右親指の負傷が原因で1970年代に演奏活動を停止、そして2002年8月27日に世を去った。
ドワイヤンのショパン「バラード集」は今日の演奏家たちの多くがそうであるような一気呵成に直線的に流れる演奏ではない。
冒頭の「第1番」では弱奏における呟きかけるような繊細な表現と力感に溢れたフォルティッシモとの対比が見事だ。絶妙な間合いで物語性を強めている「第2番」、そして最も個性的なのはゴツゴツした肌触りの「第4番」ではないか。けれどもこうした解釈は緩急法が自然で十分に歌心に溢れているゆえにその独特な表現が耳障りになることはない。
一方のサン=サーンスはドワイヤンのメカニックの凄さを改めて実感させる。
例えば彼の作品でも取り上げられる機会の多い「トッカータヘ長調」や「ワルツ形式による練習曲」はメカニックに余裕のない演奏では曲の軽やかさ、エスプリが十全に表現されない。ドワイヤンのものは前者のブリュショルリとダルレ、後者のタリアフェロにも匹敵するような圧倒的な演奏だ。やはりこのレヴェルのもので聴かないとサン=サーンスのピアノ曲の魅力を語ることはできない。それだけにこの復刻を心から歓迎したい。
〔2012年9月 谷戸基岩〕